組合員の投稿

ネット投稿に対する懲戒処分はどこまで許されるのか

2025年1月23日

 どこの会社の就業規則にも「会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと」といった服務規律がある。本来これは、常にその会社の社員であるという自覚を持って自らを律しよという抽象的・形式的な規定である。

 ところがネット社会になって、ブログやSNSなどネット上における社員の私的投稿に対してこの規則を当てはめ、就業規則違反で懲戒処分を行うという事例が散見されるようになった。

 社員の業務外におけるプライベートなネット投稿に対して内容が適切か否かを会社が判断し、不適切と判断したら懲戒処分を行うというあり方は、極めて問題である。

 むろん社員が会社・取引先の悪口を含め、業務に関わる情報をネット上で発信していた場合は、会社として対応せざるを得ない。だが、業務と全く関係ない政治的な意見などに対しても、会社が就業規則違反で懲戒処分を行うということになれば、これは表現の自由の侵害ではないだろうか。

 明確な虚偽を述べている場合は別として、労働者の業務外の私的な意見に対して使用者の側が評価を加えることが許されるのであれば、労働者は私生活の領域さえも会社に支配されることになってしまう。

 就業規則の「会社の名誉や信用を損なう行為」とは極めて曖昧な表現であり、ゆえに懲戒処分の根拠とするにはふさわしくないものである。極端に言えば、ブログで下品な冗談をつぶやいたことがあった、SNSで誰かとケンカしたという程度でも懲戒処分できることになってしまう。

 ネットで炎上したら「会社の名誉や信用を損なう行為」であるという認識が一般的になったら、意図的に誰かを炎上させ、懲戒処分されるように追い込むことも可能であろう。

 刑事事件を起こすなど具体的・明確な不法行為・問題行動があれば、そのことを理由に懲戒処分を行えばいい。さすがに「ネットで炎上したら懲戒処分を行う」と懲戒事由の規定例に明記することはできないから、会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと」という規定を恣意的に利用してネット投稿に対して懲戒処分を行うのだろう。

 就業規則の「会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと」という規定は空文化させておくものであり、これを懲戒処分の根拠に用いることは禁止すべきである。(一組合員)

 


 

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