組合員の投稿

地労委の役割は企業擁護のための推進機関?

2019年2月15日

 長崎地裁の労働審判で、和解調書に「(金額以外の)口外禁止条項」を入れる事を拒否したが裁判官が応じないので審判を求めた。それでも入れると裁判官が言ったので結審時に抗議、しかし裁判官は企業擁護のためか主文に口外禁止条項を書いたので国家賠償請求した、という事案がありました。

 労働委員会が、
 

  1. 改選以外で委員交代、しかも事前通知なくは正当なのか?
  2. 当事者に判決や労委命令を出させ、それを理由に却下や棄却した例はあるか?
  3. 相手が労働組合法第7条の条文で不都合な部分を省略して書き、それに該当しないから不当労働行為は一切ないと主張した事を注意もせず「主張を尽くした」と結審する事が、まかり通るのか?

 について労委規則を読むのが大変で、一般記事を検索していた時に東京労委の元・労働者委員らしき人物のブログが出て来て、参考のためバックナンバーを読み進めていた時に、出て来たものです。 県労委の期日で、審査委員長が、組合に和解を説得しつつ、「世の中は最終的には金と権力のある使用者が勝つ。だから組合は命令で勝ち負けをつけるのではなく、和解で実利を取るべきだ」という趣旨の発言をした。以下がその理由だそうだ。
理由1:

 県労委の命令で勝っても、資金が潤沢な会社は、中労委→地裁→高裁→最高裁と行く。その間に組合の金は尽きる。会社は、人事権等で、明らかに不当労働行為とはわからない形で組合を弱体化することもできる。会社が命令を争う間に、組合は先細る一方。(これを「兵糧攻め」というらしい)
理由2:

 組合は、数が全て、いかに圧力をかけられるかが全て。数の少ない組合は、ストをしても会社に打撃を与えられないし、会社は軽く見る。公明党は、野党では何一つ政策を実現できなかったが、与党についたことで次々政策を実現させている。だから組合員数を少しでも増やせる実利をとるべき。

 実社会で、「世の中カネと権力が全て」と公言する人を初めて見た。私の依頼者の組合員が、もし「世の中カネと権力が全て」と思う人間であったら、「少しでも労働者の地位を改善するため、少数組合を立ち上げて、会社や多数派労組と厳しい戦いをやろう」とは思わないだろう。

 審査委員長のような世界観は、一種のリアリズムだと思うし、そういう考えの組合も存在するのだろうが、それで少数派労働者の心が動くはずがない。微動だにもしない。窮地に立った組合が、正義を守ろうと必死に「救済」を求める機関が、労働委員会である。実利が欲しければとっくに会社と妥協している

 ただ、その審査委員長の経歴やこれまでの仕事を見れば、そういう世界観になるのはよくわかるのだ。彼としてはそういう世界観のもと、うちの組合を心底心配して言ってくれたと思うので、怒りは湧かない。かといって和解の方にも心はピクリとも動かない。
何ともいえない虚しい心境になった。」

 この記事は、労働委員会が和解推進機関になっていることがよくわかります。労働委員会は労組法の団結権を守るために作られた行政機関です。労働者はお金ではなく団結権や労働者の名誉のために、闘わねばならない時があります。早期解決や目先の実利だけが闘いではありません。

 また、労働審判で和解の成果が「口外禁止規定」で宣伝できなくなるのも労組としては団結権の侵害になるほど重要な問題です。その事案を手掛けた方は、「労働者側の傍聴を認めない運用とあいまって、『迅速な解決』という労働審判の趣旨が、『秘密裏の解決』にねじ曲げられているように思います」、「勝利解決は隠蔽され、雇止めを恐れて誰も会社に物を言えなくなります」とも仰っています。

 実際に裁判では口外禁止規定を入れない和解条項も多いのです。ですから口外禁止規定も労組にはそぐわないと私は思います。

 


 

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