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固定残業代の研究

2023年8月31日

 固定残業代という制度について少し突っ込んで調べてみたいと思っています。この10年で様々な裁判例が発表されていて、なにかしら定義のようなものが出来てきたようにも見えるし、違った見解が出されることもあって、紛らわしい状況が続いています。

 固定残業代とは残業代の定額払いのことを指していて、労働基準法の本来の計算方法によらないで、実際の時間外労働の時間にかかわらず「定額」を残業代として支払うことを労働契約や就業規則で決めておいて、この方法で割増賃金を支払うことを言います。

 表記としては「固定残業代」「みなし残業代」「定額残業代」などと呼ばれておりさまざまです。ここでは「固定残業代」と表記することにします。今回はこれを押さえておけば「固定残業代」を理解したといえるというところを見ていきます。

 裁判例などからよく言われているのが次の2点となります。
1.判別可能性(明確区分性)
2.対価性

 そのほかにもいくつか論点があるようです。
3.差額精算の合意、実態?
4.カバーされる残業時間数?
5.独立した手当か基本給などに含むのか?
他に細かいところとして次の点も挙げておきます。
6.休日残業、深夜残業も含むか?
7.欠勤していても支払うことになるか?

 今回は1.判別可能性(明確区分性)、2.対価性についてごく簡単に検討します。ほかの論点についても次回以降順次検討していきます。

 「判別可能性」とは固定残業代として支払う金額が残業代部分なのかそれ以外の通常の賃金部分なのかが明確に区別できるかどうかという点です。「○○手当は残業代を含む」という固定残業代は無効となります。固定残業代がその全額なのか○○円なのかがはっきりしていないと労働者が本当に残業代が払われているのかを自ら計算して確認することができません。

 したがって「含む」というあいまいな表現でなく、「○○手当はその全額(または〇〇万円部分)を残業代を補填する趣旨として支払う」などという表記でなければなりません。

 「対価性」とは支払われた固定残業代が確かに「時間外労働」の対価として支払われているいるのか、ほかの要素は混じっていないのか? という点であると言われています。契約書などの記載内容や、実際の残業時間と固定残業代として支払われた金額に相当する時間がかけ離れていないかなどの点から判断されています。

 以前は労働者が未払い残業代を請求したら、今まで普通に支払われていた「業務手当」や「役職手当」を「これは残業代(固定残業代)である。すでに支払っている。」などと言いくるめて労働者を混乱させるなどという手法がまかり通っていた時代がありましたが、今ではそんなことは通用せず、述べたような考え方で「固定残業代」をとらえることになってきており、共通の認識となっていると言えます。

 固定残業代についての最近の最高裁判例では地裁や高裁での判断が覆ってしまうという事例が頻繁に起こっており、裁判官の中でも意見の統一があまりなされていない分野です。どのあたりで意見が分かれているのかを少しずつ探っていきたいと思っています。

 


 

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