新世紀ユニオンニュースと共に、組合員に配布される「労働ニュース」を整理していて、愕然とする新聞記事がありました。「ひどい話」、「情けない話」、、、もはや言うだけ思うだけムダです。これが日本の現実です。
「会社と同じことを言う。信頼できない」
2016年11月、三菱電機に勤める男性が精神疾患を発症したのは長時間の過重労働が原因だったと、労働基準監督署が労災認定した。男性は13年4月に入社、14年6月からうつ病で休職していた。
会社は当初、休職の期限は「17年6月」と男性に通知していた。ところが16年2月、休職期限は1年短い「16年6月」だと人事担当者から突然告げられた。社内規則を見誤り、期限を長く伝えた会社側のミスだったが、男性は、あと4カ月で解雇される状況に追い込まれた。
男性は「休職期間を延長してもらいたい」と労働組合に相談した。しかし、労組支部の執行委員長(当時)から届いたメールは「規則は規則として定められており、休職期間を延長することは難しい」。
男性はあきれた。「組合なのに会社と同じことを言う。信頼できない」。個人で入れるユニオンに相談・加入し、支援を受けた。執行委員長には「労組を脱退する」とメールで伝えた。
「会って話がしたい」メールや電話が返ってきたが、断った。すると執行委員長から手紙が届いた。「当組合を脱退して他の組合に加盟することは、社員の地位を失うことにつながる規定となっております」。そう書かれていた。
男性は休職前から、労組に不信感を抱いていた。所属部署は長時間労働が常態化しており、男性も月100時間を超す残業が続いていた。上司から「俺が死ねと言ったら死ぬのか」といった注意をしばしば受けていたという。
こうした職場環境が改善しないのは、労組が放置してきた結果でもあると思っていた。労組が解雇までちらつかせたことに、男性は憤る。「頼りにならないどころか、ひどい労組だ」。
会社は16年6月に男性を解雇したが、労災認定の翌月に撤回。男性は復職を目指して交渉を続けているが、支援はユニオンに任せている。
「結局、会社の味方なんだと思った」
ヤマト運輸の支店長を集めた会議で、労組の支部委員長が、未払い残業代の全社的な実態調査について「請求できるのなら請求しようという、愛社精神の無い社員が続出している」と、「苦言」を呈した。
委員長はさらに続けた。「組合は会社に『正しい遡及支払い』をお願いしている。裏付けのない残業に残業代を支払う必要は一切ない。今後このようなこと(裏付けのない残業代の請求)が続くと、懲戒の対象となるので注意してほしい」。
親会社の社長が、約190億円の未払い残業代を計上した今年3月期の決算を、記者会見で発表する数時間前のことだった。
委員長の発言を後から聞いたある男性セールスドライバー(SD)は、つぶやいた。「結局、労組は会社の味方なんだと思った」。
男性の働く営業所でもサービス残業が常態化していたが、早朝や夜間のサービス残業の記録が残っておらず、男性は請求を諦めたという。
「多くのSDが記録がなくて、請求の一部を諦めている。サービス残業が横行していた現場の実態を、労組も把握していたはずだ。こうした不満をすくい取るはずの組織が、組合員を押さえつけてどうするのか」。男性は憤りを隠さない。
ヤマトが始めた調査を巡っては、支店長とSDの面談に労組関係者が同席したケースも一部の支店であった。その一方で、「要望を伝えても、全く労組が動いてくれない」というSDからの批判の声が朝日新聞に数多く寄せられている。
「誰が会社に、クレームのような重要情報を伝えてくれるのか。労働組合である」。「宅急便」の生みの親、故小倉昌男・元社長は自著「経営学」の中で、労組が果たすべき役割をこう説いた。労組には「経営をチェックする機能がある」と、その存在意義も強調した。だが、ヤマトの労組で起きている現実は、小倉氏が評価し、信頼を寄せた労組像とはかけ離れているように映る。
支部委員長の発言への見解や、未払い残業代の調査で労組が取り組んだことについて、ヤマト運輸労組に質問した。「いまは組織としてどこからの取材にも応じていないので、答えられない」との回答が返ってきた。
[朝日新聞 2017年7月2日より抜粋]
ユニオンショップでも脱退は、自由(解雇されない)!?
会社の労組が「御用組合」「家畜労組」なら脱退しユニオンに加入、さらに指導を受けて、こっそりこっそり別労組を組織してゆく事になります。しかし「ユニオンショップ」の企業内労組に加入“させられている”人は、どうすればよいのでしょうか?
私を含め日本の労働者は知識も情報も不足していて、「ユニオンショップの企業内労組を脱退すると、解雇される」と信じ込んでしまいます。しかし、労働組合が「団結する権利」ならば「(家畜労組には)団結しない権利」というものは、あるのだろうか?
と思いつき調べたら、最高裁判例がいくつか、見つかりました。
三井倉庫港運ショップ制解雇事件(最一小判平元.12.14)
1.ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者および締結組合から脱退しまたは除名されたが、他の労働組合に加入しまたは新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条により無効(憲法28条参照)。
2.ユニオン・ショップ協定のうち、他組合に加入している者および脱退しまたは除名されたが他組合に加入しまたは組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条により無効。
東芝事件(東芝労働組合小向支部事件)(最二小判平.19.2.2)
1.脱退の自由という重要な権利を奪い、組合の統制への永続的な服従を強いる合意は、公序良俗に反して無効。
2.従業員と使用者との間において従業員が特定の労働組合に所属し続けることを義務付ける内容の合意がされた場合において、同合意のうち、従業員に上記労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを義務付けて脱退の効力そのものを生じさせないとする部分は、公序良俗に反し無効。
[補足]
2審・東京高裁判決(04年7月)によると、東芝には入社と同時に組合員になる「ユニオンショップ制」があるが、男性は東芝労組の対応に不満を持ち、95年に脱退届けを提出、社外の労組に加入した。その後、社外労組に籍を残したまま東芝労組にも所属し続けることで会社と合意したが、01年になって再び脱退を届け出た。
組合側は「男性は合意によって脱退の自由を放棄した」などと主張したが、第2小法廷は過去の判例を引用し「労組の組合員は脱退の自由を有する」と述べた。
2審は「合意に反する脱退は許されない」と述べて訴えを退けたが、第2小法廷は「脱退の自由という重要な権利を奪い、組合への永続的な服従を強いる合意は、公序良俗に反して無効」との初判断を示し、男性の逆転勝訴が確定した。
ほか 日本鋼管鶴見製作所事件(最一小判平元12.21)、日本食塩製造事件(最高裁二小判決 S50.4.25)
なお「東芝事件」は、以下のようにも説示しています。
労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されることである。一般に労働組合の組合員は、脱退の自由、すなわち、その意思により組合員としての地位を離れる自由を有するものと解される。
つまり、ただ加入、二重加盟してるだけではダメ。きちんと組合規約に従ってはじめて、権利が保障される、という事です。
裁判所はブラック企業をも擁護し、あからさまな違法解雇を平気で認め、次々に被害者を敗訴させる、クリーンなイメージあるはずの弁護士は依頼人を巧妙に裏切る、監督署の中には労災認定しない記録を更新するのが、使命や誇りであるかの審査と決定をする例が、新世紀ユニオンで多く見られるようになりました。解雇されてから、では遅いのです。
企業内労組の多くは、会社の一部門(支配の道具)に成り下がり、抑止力であるはずのユニオンも、ある時いきなり経営者の利益を代表する言動や行動をする、時代です。「まともなユニオン」に二重加盟し、指導に従い身を守りましょう。