精神疾患は未発症でも、慰謝料請求が認められた例
この国では所謂「働かせ改革」など次々にとんでもない法・制度が施行され、社会保障の改善・充実を大義名分に消費増税が続けられ、資本家・富裕層は厚遇され労働者は虐げられ続けるばかりである。
しかし、信念を持ち創意工夫し闘い抜けば必ず道は開ける事が、先月号で採り上げられた、「(長崎)プラネットシーアール・プラネット事件」そして同じ代理人による「狩野ジャパン事件」で示されている。
この事案は製麺会社で2年間に渡り、一時期を除く全ての月で月100時間以上、長いときには月160時間以上(「一時期」でもやはり、90時間以上)の時間外等労働に従事させられた元従業員が、
①時間外、休日、深夜労働等に対する未払賃金、
②労基法114条に基づく付加金、
③長時間労働による精神的苦痛に対する慰謝料等の支払いを求めて、提訴したものである。
これに対し会社側は、「従業員の健康状態や稼働状態について、必要な配慮は尽くしていた」と主張していた。
2019年9月26日に長崎地裁は、「長時間労働により心身の不調を来したことを認めるに足りる医学的な証拠はない」としながらも、「疾病の発症にいたらなかったとしても、会社は安全配慮義務を怠り、心身の不調をきたす危険がある長時間労働に従事させた」、これは「人格的利益を侵害したものといえる」と指摘、慰謝料支払いを認めた。
複数の労働法学者は、『労働事件は過労死などの「結果」が判断基準になることが多かったが、この判決は労働者が働きやすい環境を求めて使用者側と対抗するための『論理』のひとつになる』、また慰謝料を命じたことにつき「理論的にも本件事案における判断としても妥当」「先例的な価値をもつ」としつつ、慰謝料の額の低さに「疑問がなくはない」と評価している。
先日「委員長の日記」でも指摘されたが、まるで労災申請を却下するのが任務であるような(特に大阪府の)労働行政に対抗するため、この長崎地裁の判断は活用されるべきである。特に後者、水町勇一郎教授の「慰謝料の低さ・・・」という点は、2年間もの人格権侵害に対する代償としては低額ではないかという意見ではないかと、私は解釈また重要視している。
そしてやはり、長時間労働の証拠が重要になるのは言うまでもない。しかし、タイムカードなど勤怠管理簿がない、定時にタイムカードを打刻させてから長時間サービス残業をさせる、あるいは監督署や裁判所の求めに対し経営者は改竄した記録を出して逃げを打って来る事も、ありうる。
私は新世紀ユニオンの高度な指導の一方で、被指導者(一般労働者)の目線で、証拠を残す事が困難な環境あるいは状況でも記録が出来ると考える方法を提案してきた。証拠の残し方(その4)として今一度、URLを引用する。参照して頂き、正誤や有効性は新世紀ユニオン執行部とも密に相談の上、とにかく今すぐ出来る事から実践して頂きたい。