いわゆるパワハラ防止法は制定の段階から、努力義務に過ぎず罰則規定もない、ザル法である事が指摘されていた。
本年4月から中小企業にも施行されるが、抑止力の有無また程度は如何なるものか? の感がある。身近な中小企業の現場を題材に考えてみた。
●労基法は形だけ守る、労働契約法は名さえ知らない。パワハラの何たるかも、わかっていない。
社労士に「監督署から指摘、あるいは指導されかねない」と言われた事は真面目に取り組む。労基署には逮捕や送検の権利がある為か。
試用期間を設ける、あるいは有期雇用にすれば簡単に「満了」を理由に解雇できると考えている。
採用面接で期待する成果のレベルやタイムスケジュールを示さず、応募者の能力・経験も確認せず印象・思い込みで採用する。
そして「期待外れだった」「(もっと)出来ると思っていた」と述べ、はたまた「求人票で求めた要件を満たしていない」と求人票に書かれていない能力・経験を指摘するガキのようなデッチ上げでいいがかりも付け、試用期間後に解雇しようとする。5万円もの賃下げを認めるなら本採用してやると迫る。
以後も同じいいがかりで、二言目には解雇をちら付かせ威圧し続ける。プレッシャーをかければ、奮起して成果を挙げてくれると思い込んでいるのであろう。それがパワハラだという認識がない。
そして今度は「新規開拓営業能力が無いので、職種を事務職に変える」と述べ本人の同意を得た後、約1ヶ月も経ってから、「事務職」で1年毎の有期雇用へ切替える雇用契約へのサインを迫る。
騙し打ちは明らかである。専門職でもジョブ型でもなく「総合職」であるのに、職種を「事務職」に限定した雇用契約に替え、実態は新規開拓営業の実績だけを求める。そして(コロナによる行動制限が主な要因で短期間に新規営業など出来ない)1年後に「期間満了」で、解雇しようというものだ。
またここで、「事務職」としての新たな仕事の量や範囲を制限しているが、仕事を与えない事もパワハラだという認識がない。
●背伸び?は精力的。
はやりの三文字言葉:SDGs、CSR、ESGという事をホームページに盛り込むなど、カッコつけたがる。“CSR”宣言として会社ホームページに、「人権尊重をはじめ、労働ほかあらゆる法令を遵守」「悩みを相談し易い職場つくり」「団結や結社の自由を尊重」など掲げ、認証会社に審査してもらい点数を上げ、顧客にアピールしているが、現場の実態は嘘である。
まだまだ呆れるエピソードは数あるが、防止法にはパワハラ抑止力なく、むしろ司法手続きや争議が増えるであろうと危惧する。
しかし行政や司法は資本の味方であるので、都度、安い解決金で合意退職に丸め込まれるのであろう。この法は、解雇自由化の一環であるとも思えて来た。
やはり労働者がすべき事は、法をうのみにしない。ユニオンに団結する。ということにつきる。
しかしそれだけでは無力に近いので委員長の日記・新世紀ユニオンニュースのバックナンバーで記録・証拠の残し方を学び、実践する事がますます重要になってくるであろう。