組合員の投稿

大学教員の任期制・テニュアトラック制の問題

2022年5月28日

 現在、日本の大学では任期制教員が広がっています。大学経営の悪化を理由に、3年や5年の任期で若手研究者を教員として雇用するのです。任期制で雇用された教員は次の勤務先を探す就職活動をしなければならないので、研究・教育活動に集中することができません。また短期的に研究業績を挙げる必要がありますので、じっくり腰を押し付けて長期的な研究をすることもできません。

 そこで、若手研究者の研究環境を改善するために、文部科学省が全国の大学に積極的に導入を促しているのが、テニュアトラック制です。テニュアトラック制とは、簡単に言えば、5年間の任期付き勤務の後、期限なしの教員(テニュア教員)として相応しいかを審査する制度です。

 ポスドク問題を解消し、若手研究者を保護・育成するための制度であり、その根幹は、公正で透明性の高い公募により選出され、一定の任期の間、自立して研究に専念できる立場・環境を与えられ、かつ、テニュアトラック期間後に、公正で透明性の高い審査によって安定的な雇用であるテニュア(終身在職権)を与えられることにあります。

 では、テニュアトラック制の導入で問題が解決したかというと、そうではありません。テニュアトラック教員は、テニュア審査に合格するために、人事権を持つ学長・理事長・教授会などの顔色をうかがわざるを得ません。

 テニュア教員がテニュアトラック教員にパワハラしたとしても、テニュアトラック教員はテニュアを得るまでは我慢するしかありません。私はこの制度をある組合員に説明したところ、「それは奴隷制度ではないですか」と言われましたが、言い得て妙だと思います。

 もともと日本におけるテニュアトラック制は、「我が国の大学教員の採用は、必ずしも客観的で透明性の高い手続きとなっていない」という文部科学省の問題意識から作られたものです。しかし現実には、依然として恣意的な採用が横行しているのです。

 裁判沙汰になった事例もあります。学校法人京都産業大学事件は、大学の助教としての任期(5年)が満了した原告が准教授への昇任を拒否され雇止めになったものです。助教は3本以上の査読済み論文を公刊していれば准教授として採用されるのが昇任の基準であり、原告もこの条件を満たしているにもかかわらず、審査不合格で雇止めになり、審査が恣意的であるとして大学を訴えたものです。

 京都地裁は大学側の裁量権を認め、原告の請求を棄却しています。「大学の自治」を口実にした人事権の濫用を見逃したこの判決には非常に問題があると私は考えます。

 私のケースはより深刻です。いったんテニュア審査に合格したにもかかわらず、私のツイッターでの不適切発言をきっかけとしたネット炎上を理由に、一方的にテニュアを取り消されたのです。これは労働契約の一方的な解除であり、不当解雇に他なりません。

 私のケースの詳細については、次回以降の投稿でご説明しますが、ここでは日本におけるテニュアトラック制が、文部科学省が謳う理念とかけ離れたもので、若手研究者の労働環境の改善に資するものでないことを強調しておきたいと思います。

 私は自分の労働争議を通じて、若手研究者の権利拡大に少しでも貢献したいと思っています。ユニオンの皆様にはなにとぞお力添えのほど、お願い申し上げます。

 


 

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