基本的に日本の労働裁判には「制裁・懲罰的慰謝料」の概念はなく、ブラック使用者の不法違法を咎める判決や勝利的和解でも、まるで一方で擁護すべく出来るだけ少額の賠償金・解決金しか命じない。
これでは、弁護士費用どころか本人訴訟する場合の印紙代さえ賄えず、キチンと争い被った精神的被害を回復させるべきところ闘う事を躊躇させ、結局は使用者のブラック行為の横行を招く状況である。
ただ、あくまでも一労働者としての主観的な印象だが、働き方改革またパワハラ防止など法制の施行に伴い、裁判所の姿勢に好ましく思える変化が出ているように思える。
私が把握する限り、下記の参考記事3)パワハラ裁判の一審では上司によるパワハラへの慰謝料として250万円(+10%の弁護士費用)という、日本の裁判では異例・破格と思える賠償が命じられた。
またこの事件が画期的なのは、裁判が始まった後に会社側が原告に対し、訴訟で係争すること自体が非常識で分をわきまえない行為であるかのように労働者を見下して一方的に非難し、貶めたりするような文書を送りつけた事が、労働者の名誉感情を侵害する違法な侮辱行為と認定され、この事に対しても慰謝料の支払いが命じられた事である。
また東京の公立福生病院で男性職員が適応障害を発症したのは、上司のパワーハラスメントが原因だとして、慰謝料100万円や休職中の減収分約70万円などの支払いを命じられ、これも日本にしては高額である。
この事案では相談窓口がパワハラ加害者なので相談できず、勇気を振り絞って相談するも相手にされなかったという問題があった。
さらに最近の新世紀ユニオンニュースでも挙げられているが、長時間労働そのものに、心身疾患を発症なくとも賠償金が命じられている。参考1)3)の代理人弁護士が労働弁護団の学習会で、「長時間労働が常態化している賃金請求事件では、慰謝料も請求する運動の展開をしていこう」と、述べている。
○参考記事:
このように司法は、泣き寝入りせず闘う人が報われるような動きに向かっていると、感じられる。
大切な事は、勇気を持ち闘い抜く覚悟を決める事そして諦めない事でであるが、やはり正しいユニオンを選び加入し、指導に従い証拠を残した上で実行に移す事が肝要なのは、言うまでもない。
ここで挙げた判決は、いずれも読者の方にも起こりうる境遇で、闘える事例だという事を是非とも参考にして頂きたい。